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古巣の話をするのも何ですが。
私が新卒で入った会社は東京に本社があり、
地方から出てきた社員向けの寮が赤坂に用意されておりました。
赤坂といえば高級料亭が立ち並び、政財界の大物たちが寄り集まっては

「おうおう越後屋おぬしも悪よのう」
「いやいやお代官様ほどではございませぬよふぉっふぉ」

といった会話が夜ごと交わされているというイメージが強い街。
そんな貧困なのか豊かなのかよくわからない想像力を
幸か不幸か共有していたのが私の同期たちでした。
私が盛岡赴任の辞令を正式に受けた時、
同様に東京勤務が決まった同期(仙台出身)が妙にぷるぷるしておりました。
一体どうしたのか、理由を質してみたところ。
彼女は真剣な眼差しで言いました。

「私、食料品の買い出しに行くたびに赤坂の寮にねぎとか持ち帰るの?」

道ゆくベンツ等の高級車。
専門の運転手により優雅に無駄なく路肩に停められたそこから降りてくる
貫禄あるおじさまたち、煌びやかなおねえさま方。
彼らは表面上和やかに談笑しつつ小洒落た料亭だの小料理屋だのに入り、
竹垣が巡らされた入り口を黒服のいかつい兄ちゃんたちが固める。
その前をねぎが飛び出たレジ袋を下げて通り過ぎる22歳女性(仙台出身)

……いきなりものすごい生活感が。赤坂なのに。

「やだ……あたし、暮らしていける自信ない! 
 赤坂で生きていける自信ないよ!!」
「だ、大丈夫だよ! 
 ていうか近所にねぎ安売りしてくれるスーパーはあるの!?」
「うわあああああああ高級食料品店ばっかりだったらどうしよう! 
 小洒落た輸入品のお店しかなかったらどうしよう!!」
「それなら問題ない! きっとそういう店ではねぎ扱ってない!!」

お互いに東京砂漠に対する地方在住民のイメージをぶつけ合うことしばし。
ふっと同期が視線を外しました。

「ま……自炊するかどうかも分からないんだけどね」
「ああ、うん……そうだね」

同期(仙台出身実家暮らし)の正直な告白により
不毛な赤坂論議は終結を見たわけですが。
今でもねぎを購入し持ち帰るたびにこれを思い出すんですよね。
それぞれの任地に赴き、
ごたごたしているうちに私の方が会社を辞めてしまったため、
今は彼女と連絡と取る術もないのですが。

夢と希望に胸膨らませ、
ねぎ等の食料品でレジ袋を膨らませて寮に続く道を歩いたのであろう
ぴかぴかの新卒だった彼女。

元気かなー。
彼女本人から実際にねぎを持ち帰った時の気持ちを聞けなかったのは残念だなw

そんなこんなで、
前回更新から随分間が空いてしまいましたが私は元気です。
ここ数年身辺が落ち着かなかったのですが、
今後は多少落ち着くといいなぁなどと願いつつ日々を過ごしております。
それと、長編DOUBLE LORDSの続きも昨日アップしました→
お待ちいただいていた方々、遅くなってしまってごめんなさい。
初見の方もGWで時間を持て余している時など、
気が向いた時にでもご覧くださいませ。
あっちは間違ってもねぎぼうずとかいう単語は出てこないシリアスワールドですが。
日常記、小説どちらでも
訪れていただいた方に楽しんでいただければ嬉しいです(*´ω`*)

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時々憑かれたり暴れたり萌えたりする日々。
現在は主についったーに棲息しています。

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